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「再会」と呼べる「出会い」

第12章  イカ祭りの誘惑

…おっきぃ


ガラスケースに入れられた
薄いピンク色をした
大きな   イカ。

「わぁ…凄いねぇ」

「…すげ」

チラリと横を見ると
次朗君が目をキラキラさせている。

繋がれていた手は
よりキツく包まれた。


「…」


私達は
どんどん見物人が入れ替わって行く中、
そこから動くことなく、
只 黙って見ていた。



「おーいミカ!次朗くん!
 先に行ってるよ!」

「うん」

両親とリョウ君も行ってしまい、
お昼時だからか
周りの人も徐々にまばらになり、

いつの間にか 
見える範囲には二人だけに
なってしまった。


おなかすかない?
そろそろ次に行かない?



聞く所かもしれないけど、
私はなんとなく、敢えて 黙った。

次朗君はじっと大王イカを見ている。

何を思っているんだろう。
余程興味があるみたいだけど…。


「こんなに大きいから
 さぞかし食べ応えがありそうだけど
 …実はクッソ不味いんだよね。」

「え  …そうなの?」

「エグみとか、臭いとかね。
 大きい分、浮くために
 身体に大量の塩化アンモニウムが
 あって…」

「そうなんだ
 次朗君、詳しいのね」

「好きな物の事は
 自然と詳しくなるよね」


そう言って 次朗君は
ふわりと微笑んだ。







この笑顔 好きだ…。

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