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「再会」と呼べる「出会い」

第12章  イカ祭りの誘惑

あれ


思ったより早く、
次朗さんはトイレから出て来た。


「電話したけど出なかった。
 代わりにメール送った。」


…なんだよ、
何してんだよミカ。





「わ 今日も美味そう。
 いっただっきまーす」



♪ ♪ ♪




着信音が鳴ったのは
次朗さんが席につくとすぐだった。




「…ミカ先輩から」

「なんて?」

「明日、無理だって。
 だと思ったんだよねぇ。
 やっぱり俺、あの子に嫌われてる」

言いながら、携帯をポケットに戻す。

「そんな事無いっすよ!
 もしかしたら
 山一や三井と約束が
 あったのかもしれないし」

「次朗、日曜日じゃだめなのか?」

隠土先生が聞いた。

「駄目。
 その日は約束があるから…」

「梨吉おじさんの所なら、
 私が代わりに行くよ。」

マスターが申し出る。

梨吉さんとは、東北の方に住む
次朗さんの孫だ。
孫 と言っても、年齢は80近い。


「俺もたまには顔見たいから。
 キヨだって店開けないと。
 オジサン達が休憩しに来るだろうし」

オジサン達っていうのは
チャンドラさんとダーマさんの事だ。
彼らは“仕事”の僅かな合間に
この店に来る。

 
「…けど残念。あのイベント
 今週末で終わっちゃうんだよね。
 行きたかったなぁ~っ」


行けない事が残念なのか。

ミカと出掛けられない事は…?


「一人で行けば良いじゃないですか」

松井さんが冷たく言い放つ。


「えーっ!一人で?!」


どこの女子だよって思うだろ?
意外とラーメン屋とかも
一人で行けないんだよな、この人。


「あーいうのは
 誰かと
 感動を共有するからいいんだよ」

「行けば誰彼いますよ。
 あなたと同じ イカ好き が。」

「たろちゃん冷たい…。
 兄さんは…仕事だっけ」

「ごめんな」

隠土先生が申し訳なさそうに苦笑した。

「私も明日は約束があるからなぁ
 あ、二人には断ってあるよ。」

「えーっ!キヨも?」










メッチャこっち見てる…。


「リョウちゃーん」

「な なんスか…?」

「日頃頑張ってるご褒美。
 たまには何かご馳走してあげるよ。」

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