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「再会」と呼べる「出会い」

第10章 文明の利器

って言っても五、六年前だよね。

遠い昔 

って感じではない気がするけど。



意識が虚ろになってくると、
そんな疑問もゆっくりと消えていった。




『…ズカ ミズカ』



『しょうがないなぁ
 …よっ、 と
 相変わらず軽いね。
 兄さんのご飯、
 結構食べてる気がするんだけどなぁ。
 胸も全然大人になんないし』

む 失礼な…

…あれ この感じ


私、お姫様抱っこ
されちゃってる…。



これは 夢?



『ミズカって
 ホントにすぐ寝ちゃうよね。
 寝る子は育つって言うけど
 あれ、嘘だね』

ミズカ? え?



『だって幼児体型から
 全然成長しないもん。』


っていうかっ
さっきから…なんなのっ?!

人の事馬鹿にしてっ!!


『…ま、好きだから
 目潰れるけどさぁ…』


…!





 
『…聞いてる?
 …寝てるか…』





この声には聞き覚えがある。



『おかえり また寝てしまったのか』



『兄さんが小難しい本なんて
 貸すからだよ』

『ミズカが読みたいって言ったから
 貸してやったんだ。
 この子はお前のことを理解しようと
 一生懸命なんだよ』

『…

 こんなの読む時間があったら
 他の子達と普通に遊んだ方が
 ミズカの為になるよ』

『お前…
 分かってるんだろ?
 この子の気持ちを』

『…』



……


ゆっくりと
また黒の世界へ戻っていく。
二つの声には聞き覚えがある。

けど意識が……






「お前、授業は?」

「体育、腰を痛めた事にして
 逃げてきた。
 苦手なんだよねー
 力加減の調整って…
 
 誰かいるの?」

「佐伯。
 体調崩したみたいで
 寝かしてる。」

「…所見は?」

「軽い貧血
 …女子は毎月大変だ」

「兄さん、そんな事まで
 分かっちゃうんだよねぇ、便利」

「おいっ!寝てるんだから」


カシャ…





……ん?

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