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「再会」と呼べる「出会い」

第4章 兄と弟

生まれて間もなく、
死にかける程の大病を
患ったカラスは
当時父と仲の良かった悪魔、
それも淫魔に血を分けられ
生き長らえた…。

身体は回復したものの
十代になった頃から
普通の食事では身がもたなくなった。

生きる為に
人間の“精気”が必要だった。
…もしくは、“煩悩”が。

吸収したそれらは
体内で魔力として蓄積される。

その
魔力を持つ象徴として
カラスには

真っ黒い翼がある。


…出し入れは自由らしい。
今はしまってあるようだ。


「他のみんなはどうした?
 ミズイシやハナエ、それに…」

「百年だよ、兄さん
 …みんなもう、いないよ。」


聞かなければ良かったか…。
分かり切った事なのに。

辛そうな次朗の表情に
気安く尋ねた事を後悔した。


ミズイシ、ハナエ そしてミズカ

三人共、俺達のかつての大切な家族だ。
ミズイシ、ハナエ夫妻は
早くに両親を亡くした俺達を
実の息子のように育ててくれた。
ミズカは、その二人の娘だ。
年が近く、兄弟妹のように育った。



「俺ね、玄孫がいるんだよ」

…え

あ、そうか

百年だもんな。
子供位いただろ、ミズカとの間に。

そっか、玄孫か



次朗がにっこりと微笑んだ。



「あの後、ミズカとの間に
 子供が産まれてね」

あの後とは、俺が死んだ後のことだ。

「そうかぁ!」

二人はちゃんと家庭を持てたのか。
その事実は俺にとって嬉しい事だった。


「兄さん、俺、幸せだったよ」


しかし、 
発言とは裏腹に、次朗の表情は悲しげだ。

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