
溺れる愛
第26章 選択肢は一つ
すると、遠くの入り口が開いて
そこから外の明かりが筋になって差し込んでくる。
逆光で、人の形が黒く浮かんで見える。
コツコツとヒールの音が聞こえて
たぶん女の人がいるんだ…。
それ以外の影は5つ。
全員が中に入ると、倉庫の扉はまた閉ざされて
辺りはさっきより暗くなった様に感じた。
「目が覚めたかしら?新井芽依さん」
聞いたことのない声…。
段々と近づいてくるその足元。
真っ赤なハイヒール…
この人が……私を攫ったんだ…。
「気分はどうかしら?」
『……良いわけありません…』
その人は私の返答にふんっと鼻で笑って
持っていた扇子を口元に当てた。
40~50代くらいだろうか…。
一挙一動に品がある様に感じる。
勝ち気なつり目に、やや高い鼻。
真っ赤なルージュ。
なんとなくだけど…解る。
この人きっと、那津のお義母さんだ…。
