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溺れる愛

第4章 混沌




長い校長先生の話など今の芽依には届くことは無く、隣に那津が居ることも忘れて先ほどの一件を思い出していた。



(先輩の腕、すっごく逞しかった。さすがバスケ部…それにあの爽やかな笑顔…)


地べたに座りながら、太ももに肘をついて、ついにやけてしまう口元を押さえる。


(ちょっとだけ、抱き締められちゃった…)


きゃー!!と心の中で黄色い声をあげながら
目を瞑って先輩の笑顔を思い浮かべると、これまでの沈んだ気持ちが一気に晴れていった。


「さっきからキモいんだけど」


訂正。晴れる前に逆戻り。



ぎろっと那津を睨むと、那津は何食わぬ顔。


『あんたには解らないわよ、この気持ちは』


少し勝ち誇った様に言い放つが、那津はそれ以上は何も言ってこなかった。


臨時の全校集会は、終始先輩を思い浮かべていて
先生の話など全く聞いていない芽依だった。



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