
溺れる愛
第4章 混沌
(先輩…ちょー優しい…優しすぎる…。どっかの誰かと違って天使に見える…)
思わずポーッとしてしまう自分をなんとか奮い立たせて
『あ、はいっ大丈夫ですっ』
(ヤバいヤバい!どうしよう!ドキドキしすぎてヤバい!)
「そっか、良かった」
ニコッと笑う先輩が輝いて見える。
そこに、桃花の良く通る声が響いて一気に現実に引き戻された。
「芽依ー!何してんの!早くおいでー!先生呼んでるよ!」
気がつけば皆既に体育館に入っていて、入り口近くには先輩とその友達と芽依だけだった。
『あっ、うん!ごめん!』
聞こえたかわからないが一応桃花に返事をすると
先輩がまた笑って声をかけてくれた。
「芽依ちゃんって言うんだ。可愛い名前だね。」
『かっ、かわ…!?』
(嘘!信じられない!先輩が、可愛いって!名前!)
あがりすぎたテンションに思考回路がついて行かなくなる。
「じゃあまたね、芽依ちゃん」
そのまま先輩は、友達と楽しそうに話しながら体育館へと入っていった。
(芽依ちゃん…先輩が…芽依ちゃんって…)
まだその場で動けずにいると、あの忌まわしい声が聞こえてきた。
「おい、いい加減にしろよ。」
『…っ!!』
