
溺れる愛
第4章 混沌
「俺とは何かあった?」
(こいつ…!)
『思いっきりあったじゃん!』
芽依の表情はころころと変わる中、那津は真顔を崩さない。
完璧なポーカーフェイスだった。
「何かあったかなー…あ、あれか」
思い出した様な素振りをしたあとに
芽依に視線だけくべて
「キスしたな」
クッと喉で笑いながら口角を少し上げて笑う那津は、本当にかっこいい。
『…!いちいち言わないで!』
思わず大きな声を出してしまって少し焦ったが、幸い誰も気付いてはいない様子だった。
そのまま体育館の入り口がすぐ目前に近づいてくる。
「なんで?」
『なんでって…皆に知られたらどうするつもり?』
「俺は別にいいけど…あ、でもお前が恥ずかしいか。」
『別に恥ずかしくなんか…』
「俺のキスに声我慢出来てなかったしな」
(!!本っ当許せない!!)
我慢しきれずに、今まで前を向きながら話していたがくるっと振り返って
『あんたねぇ!!いい加減にっうわっ!』
よそ見をした瞬間、ドンっと身体が誰かに当たる衝撃を感じて、反射的に振り返ると、そこにはあの憧れて止まないバスケ部の先輩がいた。
「おっと、大丈夫?」
ぶつかった拍子によろけた芽依を片手で支えながら、先輩はニコッと笑って声をかけてくれる。
(先輩!!!)
『あ、ご、ごめんなさい!!』
サッと飛び退いてペコペコと頭を下げて謝る芽依に、
先輩は楽しそうに笑って
「そんなに謝らなくてもいいよ。大丈夫だから。それよりきみは?ケガしなかった?」
