
溺れる愛
第2章 衝突
一時間ほどたった頃、ようやくクラス半分の量を作り終えた。
気付けば校庭からの声は無く、辺りはうっすらとオレンジ色。
教室にある時計を見ると、時計は5時を指していた。
(先輩…もう帰っちゃったかな…)
ふと手を止めて森山を見ると、
彼もまた芽依をじっと見つめていた。
『…っ』
(え…なに?見られてる?)
『あの…顔に何かついてる?』
困惑した様子で話しかけると
森山は静かに口を開いた。
「見に行かなくていいの?」
『…え…?』
そのときの彼は、後々芽依が憎んで憎んで止まない程の、口角を少しだけ上げた、ニヤリとした悪い顔をしていた。
(どういう…意味…?)
「何でって顔してるな。」
『そりゃあ…そうなるよ…』
固まる芽依を後目に、森山はポケットからスマートフォンを取り出し、ある動画を芽依に見せた。
それを見て、芽依の表情はみるみるうちに青ざめていく。
『な…に、これ…』
森山はクッと喉で笑って、一言
芽依の反応を楽しんでいるかのように
「あんたの盗撮姿」
『…!消して…!!』
頭で考えるより先に手が、森山の持つスマートフォンに伸びるが、
パシッと手首を捕まえられる。
「知ってる?盗撮って、犯罪だよ?」
(…この人…!)
