
溺れる愛
第8章 夏休
既に大広間には部員全員分の食事が用意されていて
皆はもう既に揃っているようだった。
(男の人ってお風呂早いんだ…)
芽依も急いで襖を開けて
『ごめんなさい…お待たせしましたっ』
と謝って席に着こうとすると、
先程まで騒がしかった広間が一変して
しんと静まり返ってしまった。
『……あの…』
(もしかして、怒ってる…?)
相当待たせたのかと思い、もう一度頭を下げようとすると
どこからともなくパチパチと手を叩く音が聞こえてくる。
不思議に思って顔を上げると
今度はわぁっとまた歓喜の声があがった。
「いやー!今年は最高だなー!」
「これでインターハイ行けそうだ!」
「頑張った甲斐あるわー!」
『え…?』
(…怒ってないの…?)
まだ状況を理解出来ていない芽依に
俊哉が立ち上がって駆け寄って来てくれる。
「みんな先に食べてて。」
それだけ言って手を引かれる。
「はいはい!ほどほどになー!」
「お前だけずりぃぞ川上ー!」
背中に冷やかしの声を受けながら
俊哉に手を引かれて大広間を後にした。
