
溺れる愛
第8章 夏休
(先輩…どうしたの…?)
掴まれた腕が痺れる様に熱い。
俊哉はそのまま芽依の部屋へ入っていく。
当然手を引かれている芽依も同じように続いた。
また部屋に2人きり。
今は電気もつけていなくて、月明かりだけで薄暗い。
また心臓がドキドキと音を立て始める。
『あの…先輩……?』
不安になって声をかけると、俊哉はハッとした様にこちらへ向き直り、掴んでいた腕を離した。
「ごめん…痛かった?」
『い、いいえ…痛くないです…』
暗くて顔がよく見えないけれど、多分真剣な表情をしていることは
聞こえる声からもひしひしと伝わってくる。
「…はぁ…情けねー俺…」
『…?』
俊哉は少しパーマの当たった髪をかきあげて
またそっと芽依の頬に触れた。
(ちょ…どうしよう…何…?)
「芽依…その格好はダメ」
切なそうな声を出す俊哉を、芽依は不思議に見つめる。
『…やっぱり…似合わないですか…?』
(若女将みたいに、和服の似合う顔じゃないし…)
心の中で落胆していると
「違うよ。その逆」
フワッと肩を抱き寄せられ、そのまま俊哉の腕の中にすっぽりと収まってしまった。
(え…!?嘘…待って…え…?)
上手く状況が飲み込めずに、声を出すことも忘れて硬直する。
