
溺れる愛
第8章 夏休
『皆さん頑張って下さいね。スポーツドリンクもしっかり冷やしておきますんで』
ペットボトルを両手にニコッと笑いかけると
皆から一斉に黄色い声を飛ばされた。
「いやーいいねー!俺一番に帰ってくるから!その時は芽依ちゃんギュウーってしてくれる?」
「は!?なんだよそれ!俺も俺も!」
「一番の奴が芽依ちゃんからのハグってどーよ?」
『あ、あの…っ』
(どうしてこうなるの…!)
部員の勢いに圧倒されつつも、チラッと俊哉を見ると
しっかりと視線が合ってしまう。
その顔はいつになく真剣で、また心臓がトクトクと脈を打ち始めた。
「なー川上!いいだろー?」
部員が俊哉に話を振る。
(先輩…何て答えるの…?)
ドキドキしながら俊哉の返事を待つと
いつも庇ってくれる彼が意外な一言を放った。
「まぁ、芽依がいいなら」
(え……先輩…?)
「どう?芽依」
真剣な表情で尋ねられて、思わず断りきれず
『わ、わかりました…』
その声に部員一同がわぁっと歓喜の声を上げた。
(ど、どうしよ…つい流されちゃったけど…)
不安そうな表情を浮かべる芽依に
俊哉がそっと近づいてきて、耳元で囁いた。
「大丈夫。絶対俺が一番に帰ってくるから」
その微かな吐息が耳を擽る。
