溺れる愛
第8章 夏休
外には既に皆揃っていて、ランニング前の準備運動をしていた。
「やっぱり女の子がいると気持ちが違うなー」
「華は大事だな」
部員が口々に芽依の存在を褒めてくれて恥ずかしくなる。
「てゆーか色白いね!日焼けしちゃうともったいないし、私服でも良かったのに」
一人の部員が芽依の腕に触れようとした瞬間
すかさず俊哉が間に立って庇ってくれる。
「ちゃんとアップしろよ。じゃないとお前だけ5キロ追加するぞ」
「ごめんごめん!ちゃんとするから!」
後ろ姿なのでその顔は見えないが
声はいつもより鋭い気がした。
だけど振り向いた表情は、やはりいつもの穏やかなもので
「私服でも良いって言ったのに…俺もちょっと気になる。日焼け大丈夫?」
『あ…はい!私、一応マネージャーなので…皆さんとなるべく同じの方が良いかと思って…』
「そんなの気にしなくていいのに…辛くなったらすぐ何か羽織るんだよ?」
『はいっ、ありがとうございます』
(相変わらず優しいなぁ…益々好きになっちゃう…)
「よし!じゃあ一列に並べよー!」
俊哉の号令に皆が従う。
(那津は…こんな事気にしないんだろうけど)
そこでハッとする。
(てゆーかなんで今アイツの事なんか…意味わかんない。)
頭を振って、一瞬出てきた那津の顔を振り払うと
ランニングを開始しようとしている部員に向き直った。
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