
溺れる愛
第8章 夏休
『と…られ…る?』
なんとか絞り出した一声がこれ。
心臓のドキドキが俊哉に聞こえないかと焦る。
「うん…俺、芽依が……」
「おーーい!川上ーー!どこだーー!」
そこで、廊下から俊哉を呼ぶ声で話が中断された。
「残念…続きはまた今度言うね」
俊哉は名残惜しそうに、頬に触れた手を離すと
そのまま声の主の方へ行ってしまった。
(先輩…今…何て言おうとしたの…?)
まだ鳴り止まない胸を押さえながら
先程まで俊哉に触れられていた頬に手を添える。
『先輩の手…大きかったな…』
まだそこに残る感触にしばらく酔いしれる。
────続きはまた今度─────
(今度って…いつ…?)
俊哉の言葉に翻弄される心。
空白の最終日が芽依を期待させる。
(とにかく今は、ちゃんとお手伝いしないと)
気持ちを入れ替えて、羽織っていたパーカーを脱いで
Tシャツとハーフパンツ姿になった。
