
溺れる愛
第8章 夏休
部員一行と芽依を乗せたバスは
長い山道を抜けて、広大な緑の広がる道へと抜けた。
そこからまた更に一時間程バスを走らせて
ようやく合宿の会場となる老舗旅館にたどり着いた。
皆がうーんと伸びをして、その澄んだ空気を吸い込む。
(わぁ…綺麗…)
あたり一面生い茂る緑に目を奪われる。
強化合宿というだけあって、体力をつける事に重点を置くにはもってこいの場所だ。
「皆様。ようこそ遠いところまでおいで下さいました。」
旅館から年老いた女将が、品のある佇まいで深く一礼をしながら長旅の苦労を労ってくれる。
「今年もお世話になります。宜しくお願いします!」
俊哉の挨拶に、部員全員がそれに習って頭を下げる。
芽依も遅れて、慌てて頭を下げた。
「こちらこそ、宜しくお願い致します。
さ、お疲れでしょう。中へお入り下さいませ。」
旅館の中からも、中居達が頭を下げてくれている。
「行こう、芽依」
『はいっ』
俊哉に促されながら、芽依もその旅館の敷居を跨いだ。
