
溺れる愛
第8章 夏休
──────………
「芽依ー!荷物これだけー?」
『あ、はい!そうですー!』
少し遠くでバスへ荷物を積み込む俊哉が眩しい。
絶好のお出かけ日和な雲一つ無い晴天の中
芽依はバスケット部の臨時マネージャーとして
夏の強化合宿に参加し、出発しようとしていた。
「芽依ちゃん、本当ありがとね。助かるよ」
眼鏡をかけた頭の良さそうな俊哉の友達が
にっこりと微笑んでくれる。
『いえ…あの、迷惑をかけないように頑張ります』
「いいのいいの。そんなに気張らなくて。
芽依ちゃんが来てくれるだけで充分だから」
『…?はあ…』
(何なんだろ…あの含み笑い)
「芽依ー!おいでー!」
俊哉が自分を呼ぶ声にドキドキしながらそちらへ駆け寄ると
「あいつ、また何か言ってた?」
爽やかな笑顔が太陽よりも眩しい。
『えっと…芽依ちゃんが来てくれるだけでいいからって…』
俊哉は、はぁと小さく溜め息をついて
芽依の肩にポンと手を添えた。
「ごめんな、あいつら相変わらず冷やかしてくるから…」
『いいえ…あの、私、凄く楽しみにしてたので…嬉しいです』
その言葉に俊哉がニコッと優しく微笑むと
少し照れたように
「俺も…昨日寝れなかった」
と、歯を見せて笑った。
(この笑顔…反則……)
またいつものギャップにやられながらも
芽依も、はいと小さく返事をして笑った。
「こら、そこの2人!いちゃついてないで早く乗れよー!」
いつの間にか部員全員がバスに乗り込んでいて
窓からニヤニヤしながらはやし立てて来る。
(い、イチャついてって…!!)
恥ずかしくなって顔を俯けた芽依を庇うように
「うるせーな、冷やかすなよ」
俊哉も少し照れて、だけど当たり前の様にさりげなく
芽依の手を取ってバスのステップに脚をかけた。
ドキンッと心臓が飛び跳ねる感覚に顔が熱くなる。
(先輩と…手…繋いでる…)
「おいで、芽依。足元気をつけて」
スマートにエスコートしてくれる俊哉は
本当に大人っぽくて様になる。
『…はい……』
夏の暑さも手伝って、芽依は顔から火を噴きそうな程に頬を赤らめた。
