
溺れる愛
第8章 夏休
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テスト期間を終え、答案用紙を続々と返される中
芽依はふるふると歓喜に震えていた。
『…信じられない……』
全教科、80点以上という
自身の史上最高得点を叩き出していた。
それもそのはずで、那津の張った山は全てテストに出てきて
それを重点的に教えられていた芽依は
テスト当日、スラスラと問題を解くことが出来たのだ。
「えー!?ちょっと芽依!あんたいつからそんなに頭良くなったの!?」
桃花が、芽依の答案用紙を見て愕然とした声を上げる。
『え…うん。今回は頑張ったんだ!バスケ部の合宿に行きたくて』
「あーあれね!凄いじゃん!さすが恋の力は果てしないねー」
「何おやじ臭い事言ってんのよー」
桃花の言葉に皆が突っ込みを入れる中
芽依はうずうずしてたまらなかった。
早く、放課後になれと。
那津は放課後、いつも図書室にいるらしい。
いつも席で読んでいる本は、ほとんど図書室で借りたものだそうだ。
皆の前で話し掛けられる事を嫌がっているであろう那津を気遣って、今はお礼をする事も出来ない。
(やった…やったよ、那津!)
心の中で那津へガッツポーズを送るも、彼に届くはずもなく
斜め前に座る広い背中をじっと眺めていた。
そして、長い授業を終えて
やっと待ちわびた放課後を迎えると
芽依は荷物を乱雑に鞄へと放り投げると
一目散に図書室を目指して走った。
