溺れる愛
第8章 夏休
顔をあげると、那津がポンポンと芽依の頭を撫でていて
その表情は笑ってはいなかったけど柔らかかった。
『…なに…?』
少しだけトクトクと鼓動する心臓。
「大丈夫。芽依なら出来る。合宿、行くんだろ?」
ドキッとした。
こんなに優しい彼は初めてで。
その包み込んでくれる手の大きさにも安心する。
(なんか…やっぱり格好いいよね…)
少し照れて、また俯くと
「まぁ、この俺が直接教えてやってんのに
出来ねー方が有り得ねぇけど」
この傲慢で自信家の彼に
上がったり下がったり振り回され続けているけど
俊哉の事で必死になっているのを知っても尚
快く協力してくれている。
その真意は見えないけれど、今は素直に感謝していた。
『うん…ありがとう。頑張る。合宿行く!』
那津の励ましに気持ちを入れ替えてまた問題に向かう。
その時の彼の穏やかな表情に、芽依は気付くことはなかった。
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