
隠れて甘いkissをして
第67章 突然の選択
隼人は穏やかな表情で、話を続ける。
私は、ただただ黙ってその言葉を聞いていた。
「父の残した言葉の通り、俺は母の事でいっぱいだったから
父の事をちゃんと思い返したのは、この仕事を始めてからだった。
父の年に近付くにつれて……早くにこの世を去った彼が、俺に望んだ事はなんだったのか
生きていたなら、俺に何をさせたかったのか…
職種は違っても、同じ業界にいた彼に対して、日々そんな事を想うようになっていたんだ」
隼人はそこまで話すと、目線を私に戻した。
少し沈黙したあと………
静かに話しはじめた。
「アンジーはね、俺の父親のファンだったんだ。
スペインの舞台を、何度も見に行ったらしい。
俺は、父が生きてきた時に出来なかった、遅過ぎる親孝行がしたいと思っていた。
……俺とアンジーは……
理由は違うけど、目指す目的地が同じところにある」
