
隠れて甘いkissをして
第61章 夢じゃないよね?
「……このまま、聞いてほしいんだけど」
立花先輩は、あたしを支えたまま、話し始めた。
「……俺……麻里奈と別れて、咲原とも色々あって
今まで生きてきた中で1番、目まぐるしい夏だった。
自分の好きな女が泣く姿を……こんなに多く見たのも、初めてだった」
頭の上で、先輩の穏やかな声が響く。
あたしはドキドキしながらその言葉に耳を傾けた。
「今度また誰かを好きになって、付き合うことができたら
その人が笑っていられるように、泣かないように……
ちゃんと相手を大事にできるような人間になろうと思ったんだよ。
……ある男に教えられたことなんだけどさ」
先輩はあたしの体を起こして
まっすぐに見つめてきた。
「それまで自分を見つめ直す為に、時間を置こうと思ってたんだけど。
海老沢、お前が……
考える時間もくれないくらい、俺の中にグイグイ入ってくるからさ。
お前のそのパアっと明るい笑顔を見たり、元気に追いかけてくる姿を見ると、こっちまで笑っちまう。
心が暖かくなってくるんだ」
