
隠れて甘いkissをして
第54章 それぞれの道へ
「あの女、ドツいてやろうと思ったんだけど」
マネージャーは俺の横で口を開いた。
「ピンときたわ。
あんたが、彼女が言ってたアキくんね。
彼女、別人のようになってね。
しつこいくらい、泣きながら頭を下げて由宇に謝ってたわよ」
「……………」
「目が覚めたんじゃない?
由宇も大丈夫だったし、あとはあんたに任せるわ」
マネージャーはそう言うと、ギラギラした財布からタクシーチケットと名刺を取り出して、俺の手に押し付けた。
「………? これ……」
「隼人をここまで連れてきてくれた、ほんのお礼よ。
どうせこの時間に電車なんてないでしょ。
アタシはシゲちゃんと一緒に先に帰るから。
あんたはそれを使って、そこの彼女も家まで送り届けてあげなさいよ」
