
隠れて甘いkissをして
第52章 回想
………由宇を見つけたのは、本当に偶然だった。
ちょうど梅雨から夏に季節が変わろうとしている時
通りの反対側に、土砂降りの雨の中で傘も持たず、1人立ち尽くして号泣している女がいた。
(……なんだアレ…… )
この業界に入って顔が割れるようになってから、滅多な事がない限り、自分から他人に近付くことはしていない。
ましてや、業界にいない女には特に注意している。
だから、その時は単なる興味本位だった。
だけど
傘を差し出して振り返ったその姿に
俺は全身が震えた。
