
隠れて甘いkissをして
第52章 回想
『…………………』
………言葉が出なかった。
俺を父の名前で呼んだ事よりも、俺を見るその目が……
俺の知らない視線になっていた事に、すぐ気付いた。
母は俺と同じ子供の目を……少女の目をして
ラベンダーの花を摘み、嬉しそうに俺に差し出した。
『はい、レオ』
『………………っ』
………違う………
母さん、俺は父さんじゃない。
母さんにあの頃の笑顔を思い出してほしくて、父さんの真似をしていたんだよ。
俺は………!
『………………』
それでも
夏の太陽の下、母の笑う顔が眩しくて
それが見れるのなら………
俺は自分を心の中に閉じ込めて
4年越しの笑顔を見れた幸せを、ただただ噛み締めていた。
