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華のしずく~あなた色に染められて~

第11章 【紫陽花~華のしずく~】二

 寝所に入ってくるなり、秀吉はいきなり明子を抱き寄せた。いつものように枕許には異国の酒が用意されていたが、グラスを手にすることはなかった。
 秀吉の逞しい胸に引き寄せられた明子の眼に、涙が浮かんだ。
 雨は相変わらず降り続いている。軒を打つ雨音を聞いていると、細い雨はこの二人だけの静かな閨にも降り込んでくるような錯覚に囚われた。

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