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華のしずく~あなた色に染められて~

第10章 【紫陽花~華のしずく~】一

―はるばる遠方よりよう参られた。やんごとなきお育ちの姫にはこの片田舎での生活はいかにもつまらぬものと思われるやもしれぬが、青龍の国もまた良きところでござれば、ゆるりと過ごされよ。
 優しげな口調で言った秀吉に明子は黙って頭を下げ、礼の口上を述べ、それで対面は終わった。
 明子の想像どおり、秀吉はその夜、明子の許へも訪れず、寝所へのお召しもなかった。

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