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華のしずく~あなた色に染められて~

第10章 【紫陽花~華のしずく~】一

 が、明子は騙されなかった。このいかにも気さくな男の瞳に隠された鋭い光を見たのである。秀吉は隻眼であり、黒革の眼帯を左眼にかけている。ゆえに左の眼はしかとは判らぬけれど、右眼は色素の薄い茶色であった。南蛮人の母を持つという秀吉の眼は時に青色にも見える。じっと見つめていては、危うくその深い瞳に引き込まれてしまいそうで、明子は狼狽して眼を逸らした。

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