テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第10章 【紫陽花~華のしずく~】一

 明子は今、昨日の秀吉との対面の儀をぼんやりと思い出していた。明子の部屋は青龍の城の奥向きの一角に与えられた。奥向きは秀吉の側室たちが住まっている。明子は京の都から下向したことから、「左京局」と呼ばれることになった。部屋の縁からは小さな庭が見える。水無月の今、庭の片隅には紫陽花の樹がうっすらと淡く色づき始めていた。
「されど、姫様。狐の皮をかぶった虎とは、よう申されましたなあ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ