テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第4章 【華のしずく】~試練~

「今宵が天守から眺める最後の月になろう」
 信成は穏やかに言い、珠々を見た。
「突然、そなたをさらうようにして城へ連れてきて、無理に妻にした。さぞかし、わしを恨んでいるであろうに、ようまめやかに仕えてくれた。短き日々ではあったれど、わしは、そなたという妻を得て至福の時を持つことができた。礼を申すぞ」
「勿体なきご掟にごさいます」
 珠々は深く頭を垂れた。涙が溢れるのが判った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ