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禁断兄妹

第54章 由奈~終わりの始まり②~


「モデルの給料だけで食っていきたくて、死に物狂いで努力してきたはずだ。その夢がもうすぐ叶うと言っていた‥‥思い出して欲しい」


「わかってる。忘れたことなんてないわ‥‥でもそれと柊君とのことは別よ。撮られないように気をつける。それでいいでしょ?」


「嬢、世の中はそんなに甘くない。ほとぼりが冷めるまででもいい。会わないと約束して欲しい」


「‥‥嫌よ」


「嬢」


「できない約束をするのは、大嫌いなの‥‥っ!!」


剣を引く気はない


「あのクソガキに、嬢の夢をドブに捨てられる訳にはいかない。会ってはいけない」


「夢だの努力だのうるさいのよ!!」


込み上げる言葉にならない感情が
何かを突き抜け爆発した。


「私の夢よ!私がした努力よ!たとえドブに捨てようが、私の勝手でしょう?!」


震えるほどの激情


「帰って!帰ってよ!!」


「‥‥約束してくれたら、すぐにでも」


それでも平然としてる修斗

なんて冷たい瞳


「‥‥っ」


まくしたてようとした言葉が
喉の奥で
風の音に変わる。

熱くなってるのは私だけ

いつもそう

バカみたいだ

修斗の顔にも
このバカ女って書いてる。

力が
抜けていく。


「‥‥ふ‥‥っ、ふふ‥‥」


一周回って
笑いが込み上げた。


努力
柊君への想い


「修斗‥‥あんたに何がわかるの‥‥」


ああ
目の奥が熱い

おかしくてたまらない

涙が滲む。

再び口に運ぼうとした
缶ビール


「‥‥何がおかしい?」


低い声と共に伸びた修斗の手が
私の手の上から
缶を掴んだ。

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