
禁断兄妹
第89章 禁断兄妹
「父は母に『何も聞かないでくれ』と言って、必要最低限のことしか伝えていなかったようで、その父が亡くなってしまっては、KENTAROさんと何を話したかったのか、何に方をつけたかったのか、母にはわからなくて‥‥それでも、この手紙をKENTAROさんに返すと言っていたことは確かなので、受け取って欲しいと母は言いましたよね。
しかしあなたは、受け取れないと仰った。どうしてですかと驚く母に、読む資格がない、と‥‥そして、手紙は父の棺に入れて欲しいと、仰いましたね」
苦悶の表情のKENTARO
喘ぐように
白い息を吐く。
受け取れない
読む資格がない
何故だ
美弥子の驚きは
今の俺と重なる
愛する人が最期に書いた自分宛ての手紙
何故受け取らず
灰にしようとした
「母は大変動揺していました。この手紙を返すことは、巽さんの最期の願いと言っても過言ではないから叶えてあげたい、どこへでも責任を持って渡しに行くからどうか受け取って欲しいと、懇願していました。
しかしそれでもあなたは受け取りを拒み、手紙は自分のものなのだからどう扱うかは自分の自由だ、と仰ったことが、会話から察せられました。
そして結局母はあなたに折れ、手紙を父の棺に入れて焼いてしまうこと、この電話の内容を他言しないことを約束して、電話は終わってしまいました‥‥」
