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禁断兄妹

第71章 君が方舟を降りるなら


ダイニングテーブルの椅子に
お兄ちゃんが腰掛けた気配

こちらからは見えなくても
その存在感が
手に取るようにわかる。


「前に会った時よりも、ずっとずっとかっこよくなってた!すごーい!」


目をキラキラさせて
興奮気味のたかみちゃん


「なんていうか、器の大きさっていうか、懐の深さ?!
 何でも受け止めてくれそうな大人の余裕が溢れちゃってる感じっ」


ダイニングから
クスクス笑いが聞こえて


「たかみちゃんありがとう。ちゃんと聞こえてるよ」


余裕たっぷりの笑顔が見えるような声に
たかみちゃんがキャッと歓声を上げた。


「本当、柊は最近一段と大人っぽくなった感じでね。何でも親身になって聞いてくれるし、すぐ動いてくれるし。とっても頼りになるのよ」


───萌。

 俺が力になる。支えになる。癒すし、なぐさめる。

 だから知ることを、恐れないでくれ───


私はあれからずっとお兄ちゃんと向き合えずにいたから
わからなかったけど

お兄ちゃんは口だけじゃないんだ

私を支えてもまだあり余るほどの力があるんだ

言葉を越えて
はっきりと肌で感じる

だけど


「よしっ、じゃあ萌ちゃん、そろそろ始めよっか。
 まず萌ちゃんの記憶ってどこまであるのか、もう一度確認していいかな。
 そこをはっきりさせて、そこからのことを色々おしゃべりしていこうよ」


たかみちゃんは
学校のプリントや部活のスケジュール表をバッグから取り出した。


「う、うん。そうだねっ」


そうだ
今日はその為に二人が来てくれたのに
しっかりしなきゃ

私は今までスケジュール手帳を持っていなかったから
昨日お母さんが買ってきてくれたものを開いて
ペンを手に取った。

お兄ちゃんの広い胸は
何でも受け止めてくれるのかもしれない

でも
だからってどうすればいいの

わからないよ

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