
禁断兄妹
第71章 君が方舟を降りるなら
変な口出しをするつもりはないからって
それと
このことはお兄ちゃんにもきちんと話しておくと言われた。
『萌に彼氏がいたことを知ったら、お兄ちゃんびっくりしそうね』
お母さんはそう言ってたけど
きっとお兄ちゃんは前から知っている
私はそんな気がした。
記憶が途切れる前日
タカシ先輩にマンションの前まで送ってもらって
二人で一緒にいるところを
見られているから
スーツケースを引っ張って
サングラスをかけてたお兄ちゃん
私は会えた事が嬉しくて
おかえりって駆け寄ったけど
冷たい表情のまま
足も止めずに行ってしまった。
あの時
お兄ちゃんは気づいたんじゃないかな
「───確かたかみちゃんはクラリネットだったと思うけど、タカシ先輩は何を担当されてるのかしら」
「指揮をしています。必要がある時はピアノを」
「素敵ねー。私も先輩の指揮で演奏したいわぁ」
タカシ先輩は
ありがとうございます、と涼やかに笑って
「あの、お母様に先輩と呼ばれるのは恐縮してしまうので、どうぞ名前で呼んでください。
僕の名前は尭(たかし)柚瑠(ゆずる)です」
