
禁断兄妹
第71章 君が方舟を降りるなら
「たかみちゃんもタカシ先輩も、萌に会いに来てくれて本当にありがとうね。遠慮しないで食べたり飲んだりしながら、おしゃべりしてね」
リビングは冬の柔らかな陽の光に満ちて
テーブルの上には
瑞々しいお花とサンドイッチやお菓子
「急にお邪魔して、すみません」
「ううん、昨日萌に話を聞いてから、すごく楽しみにしてたのよ。
三人で積もる話もあると思うんだけど、私にもみんなのおしゃべりを聞かせて欲しくてね、リビングに用意させてもらったの。よろしくね」
「聞かれちゃうと困る話をするつもりはないので、大丈夫です。ね、先輩」
「うん。お母様が萌さんを心配してる気持ちはよくわかるので。いてくださったほうが逆にいいくらいだと思います」
「二人ともありがとう。
忌中だとかそういうことには本当に気を使わないで、楽しく過ごしてね」
はいっ、という二人の元気な声に
お母さんは嬉しそうに頷いた。
お父さんが亡くなってから
お母さんはぼんやりと物思いに耽っていたり
何かのきっかけで涙を流すことが多くて
それは私も同じだけれど
お母さんのほうがもっともっと辛いはず
だからこんな風に家に誰かが来てくれて
少しでもお母さんの気分転換になるなら
私も嬉しい。
「サンドイッチはね、今日の午前中に萌と一緒に作ったのよ」
「そうなんですね。
なんだか具がオシャレだし美味しい!萌ちゃん上手ー」
「良かったあ。色んな味があるの。
エビとアボカドとかのお食事系と、フルーツと生クリームのデザート系と」
「ホント美味しいよ。盛り付けも綺麗だな」
賑かな食卓
楽しい
けど
お兄ちゃんは
いつ帰ってくるんだろう
今日のことは
お母さんの口からお兄ちゃんに伝えられている
でも
朝早くからお仕事へ出掛けているお兄ちゃんが
いつ帰ってくるのか
わからない
