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禁断兄妹

第71章 君が方舟を降りるなら


「萌ちゃーん!!久しぶり!!」


たかみちゃんとお互いに駆け寄って
ぎゅっとハグ。


「萌ちゃん、大変だったね、大変だったね」


「ごめんね、ずっと連絡もしなくて、ごめん」


「いいよ、だってお父さんのこととか、大変だったんだもん。辛かったよね」


たかみちゃんの声は涙声で
そのまま二人で
泣いてしまった。


私は怪我をした日から学校を休んでいて
そのまま冬休みに入っていた。

怪我をした時に携帯を落としたらしくて
誰とも連絡を取りたくない気持ちだったから逆にほっとしたくらいだったけど
気持ちも落ち着いてきたし
昨日家の電話からたかみちゃんに電話をして

お父さんが亡くなったこと
頭を打つ怪我をして半年分もの記憶が飛んでしまったことを
全部話した。


「萌ちゃん、今日はいっぱいおしゃべりしようねっ。今日だけじゃなく、これからできるだけ会っておしゃべりしよう?
 そうすればきっと大丈夫だから。大丈夫だからねっ」


昨日の電話で
記憶が戻っていない状態で学校に行くのが不安なことや
だからといって
積極的に記憶を取り戻したい気持ちになれないことを正直に話したら

『部活のこととか、友達との話題とか、私が覚えてること全部話すよ!
 そうすればもし記憶が戻らなくても、学校で違和感を感じないんじゃない?』

そう言ってくれて
すぐに家に来てくれることになった。


「たかみちゃん、来てくれて本当にありがとう‥‥」


「萌ちゃんとおしゃべりするの楽しいもん、喜んで来ちゃうよ。
 タカシ先輩もね、何でも力になってくれるって」


「一ノ瀬」


そっと肩に手を置くようなタカシ先輩の声に
顔を上げた。


「大変だったな。怪我のことも、お父さんのことも」


真面目な声
涼しげな目元が
暖かい。


「先輩‥‥」


「俺が力になれることなら、何もでもするから。遠慮しないで頼ってくれな」


「はい‥‥ありがとうございます」

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