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禁断兄妹

第63章 聖戦




───なんだか急に‥‥気分が‥‥───



お父さんの声が
途切れたあの時

私は飛びつくように
ナースコールを押した。


「看護師さん呼んだからね、今来てくれるからねっ」


返事はなかった。

薄く開かれた唇から
微かな息遣いが聞こえるだけで
お父さんの身体はぴくりとも動かない。


気が遠くなるような静けさの中

壊れそうなほど
激しく打ち鳴らされる心臓

私は崩れるように
枕元にしゃがみこんだ。


「ごめんなさい、疲れさせて‥‥ごめんなさい‥‥」


後悔に
声が震えた。


灰谷さんは気を遣って
お見舞いを切り上げてくれたのに

私は
何も考えず

居座り

喋り続けて




「‥‥お前のせいじゃない‥‥」


絞り出すような声が
聞こえた。


「お父さん‥‥!!」


「ガタがきてるって言ったろ‥‥こんなに急に来るとは‥‥誤算だったが‥‥」


「もう喋らないで、寝てていいから、ねっ」


私の言葉に
お父さんは首を振って


「‥‥机の中の‥‥手紙‥‥」


閉じてしまいそうになる瞼をこじ開け

揺れる視線を
机に向けた。


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