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禁断兄妹

第63章 聖戦



「ここを抜けていくよ」


その言葉に
駐車場に足を踏み入れてることに
気がつく。


さっき独り言のように言っていたのは
ここのことかな

ここを抜ければ
タクシーが拾える道に出る

あと少しで

病院に戻れる


気持ちが弛んで
足がもつれた私と

速度を落とした柊の先輩が
並ぶ。


「大丈夫かい?もうすぐだから頑張れ」


柊の先輩は私の腕を取り
引っ張るように歩く。


急ぎたいのは勿論だけど

ちょっと

待ってくれませんか


でも
声を出すより
息をするほうが先で

言葉にならない。


ぽつりぽつりと停まっている中で
通り過ぎかけていた
一台の車

月明かりに
ひときわ光っている

黒い
乗用車


あれ

この車だけ
エンジンがかかってる


そう思った瞬間

突然車に駆け寄った先輩の手が
その後部座席のドアを開き

背中に回ったもう片方の手が

私を車の中へ

突き飛ばした。


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