
無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第4章 参の巻
外はうららかな春の陽が差しているというのに、公子の心は真冬の陰鬱な曇り空のように暗い。蔀戸を通して明るい陽光が部屋内にまで差し込んでいるのに、部屋の中はどす黒い影に覆い尽くされているように思えた。
枕許には乱れ箱が置いてあり、萌黄の襲がきちんと畳まれた状態で置かれている。この襲は公子が数日前、参内したときに身に纏っていた衣装だ。この数日間というもの、装束を身につけることもなく、薄い夜着一枚で過ごしてきた。着替える気にもならず、布団の中に潜り込んで泣いてばかりいたのだ。
枕許には乱れ箱が置いてあり、萌黄の襲がきちんと畳まれた状態で置かれている。この襲は公子が数日前、参内したときに身に纏っていた衣装だ。この数日間というもの、装束を身につけることもなく、薄い夜着一枚で過ごしてきた。着替える気にもならず、布団の中に潜り込んで泣いてばかりいたのだ。
