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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第4章 参の巻

 身体が恐怖に竦みそうになるのを、内心の動揺と怯えを悟られまいと夢中で押さえ込む。
 帝はなおも公子を感情の読み取れぬ瞳で見つめていたかと思うと、あっさりと背を向けた。
 帝の上背のある後ろ姿が部屋の外に消えると、公子は急にへなへなとその場に頽れた。
 まるで空気の抜けた紙風船になってしまったかのように、漲っていた緊張も不安も霧散してしまった。

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