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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第4章 参の巻

 こんな卑劣な嘘つき男の言葉を信じてはいけない。父が、道遠がそんなことを言うはずがないのだ。これもすべては、この男が公子を惑乱させ、家に戻ることを諦めさせようと画策しているだけにすぎない。
 騙されてはいけない。公子は懸命に我が身に言い聞かせた。
「道遠が姫のその一途なまでの信頼を裏切らぬことを祈るとしよう」
 帝の冷たい視線が真っすぐに見下ろしてくる。公子は唇を噛みしめ、その視線を受け止めた。

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