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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第4章 参の巻

 公子の眼には涙が溜まっていた。この少女が懸命に泣くまいと耐えているのがひとめで判る。ふと憐憫の情が湧き、帝はしばし公子を見つめていたかと思うと、肩をすくめ、その手を放す。
 漸く解放された公子は急いで帝の膝から滑り降り、帝から距離を取って離れた。
「また食べなかったのか?」
 帝の問いには応えず、公子はその場に手を付いた。

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