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ショートラブストーリー

第12章 瑛大(えいた)

もう一度あれを話すのかと思うと、苦笑いしか浮かばない。

だけど、ちゃんと伝えないと。

ひとつ咳払いをして、北方さんを見る。

「ここから引っ越し先まで、新幹線でもだいたい二時間かかるんだ」

「二時間…」

「なかなか逢えないし、君にもしもの事があってもすぐには駆けつけてあげられない」

「…はい…」

あぁ、また泣きそうな顔をしてる。

「でも、逢えない距離じゃない」

俺の一言で、目の緊張がふっと弛んだ。

「もし君がそれを受け入れてくれるなら…俺と付き合ってもらえませんか?」

目を見開いて俺を見つめる瞳がだんだん潤んでいく。

「いいんですか…?迷惑じゃないんですか?」

「俺より君の方が、我慢したり負担に思うことが多いと思うけど…」

北方さんはブンブンと音がするくらい勢いよく顔を横に振って否定すると

「そんなの…!!全然大丈夫です!!」

顔を振ったせいで頬に零れた涙を指で拭うと

「今日でもう逢えないと思ってたから…嬉しくて…」

頬を赤くして、照れたように笑いを浮かべた。

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