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ショートラブストーリー

第12章 瑛大(えいた)

自然な流れで北方さんを抱き寄せた。

俺の胸の中でびくりと体を震わせ…遠慮がちに背中に手が回された。

「…ごめんなさい」

震える声で北方さんが告げる。

「好きになっちゃって…断られたのに、全然諦められなくて…ごめんなさい」

頭の中で、倉田の声がする。

【その気がないなら、『君の事は好きじゃない』とか嘘ついてでも突っぱねれば良かったのに】

その通りだ。

あんな言い方で断ったのに、キスしたりして彼女を惑わしたのは俺だ。

北方さんが謝ることはないんだ。

悪いのは、俺なんだから。

「いいんだ。俺こそ…すまなかった」

泣かせたくないのに。

俺のやっている事はどうして裏目に出るんだろう。

落ち着かせようと、北方さんの頭を撫でる。

細くてサラサラの髪。触っていて心地いい。

…慰めようとしてるのに、俺が癒されてどうするんだよ。

思わず頬が弛む。

「公園で話したこと、どこまで覚えてる?」

俺の問いに、おずおずと顔を上げて、困ったような顔で

「二時間…の話、ですか?」

そうか。そこからか。

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