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ショートラブストーリー

第11章 美帆③

「成程ね。ここなら安全な訳だ」

比呂子さんの言葉に、倉田さんが笑ってみせる。

「そういう訳。…んで?なんで落ち込んでるんだ?」

「…ご想像の通りです」

倉田さんはフフンと笑うと

「決心したんだろ?…お望みなら、慰めてやるよ?」

と、あたしの頭を撫でようとする。

「いいです!!」

倉田さんの手を払って逃げるのに

「また否定とも肯定とも取れる返事だな」

「何が!?思いっきり否定じゃないですか!!」

「いいから。慰めてやるよ」

何?いつもよりしつこいような…。

もしかして、酔ってる!?

前回の飲み会で、髪の毛グチャグチャにされたことを思い出した。

「倉田さん、酔ってるでしょ!?」

「酔ってたら何だよ」

そのとき、幹事の伊能さんがお開きの挨拶を始めた。

「マジかよ。俺まだ食ってないのに」

倉田さんが嘆いた。

あたしは課長の別れの挨拶を聞きながら、残ったビールを一気飲みした。

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