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ショートラブストーリー

第7章 高橋②

「あたしね…高橋さんの事、まだ知らない事多くて…たまに不安になるの」

シャツを脱ごうとして、真由美ちゃんの言葉に動きが止まった。

「高橋さん、優しいから…他のお客さんにも同じように話してるの見ると、あたしだけじゃないんだとか思っちゃったりするし…」

そっと厨房に向かうと、こっちに背中を向けて、俺のエプロンをたたんでいた。

「名前教えてくれないのは長く付き合うつもりじゃないからなのかとか、そのうち他に好きな人が出来たらどうしようとか…」

後ろからそっと抱き締めると、真由美ちゃんの肩がビクンと揺れた。

「ごめん…」

真由美ちゃんは横に首を振った。

「それで…亮が遊びに来たとき相談したら…絶対遊ばれてるって」

「それで、俺を見に来たのか」

それなら店に来たときの態度も分かる。

「昔から自分の目で見たものしか信じない子で…迷惑、かけませんでした?」

「いや、そんな事は…」

答えながらも、ちょっと引っ掛かるものがあった。

「あのさ…亮って、真由美ちゃんの…何?」

「え?…亮、言いませんでした?弟ですけど…」

弟?そんな話聞いてないぞ。

「自己紹介してきたって言ったから、てっきり…」

絶対わざとだ。

真由美ちゃんとの関係を言わずに、俺がどんな行動するかを見てたってわけか。

「くっそ…やられた」

真由美ちゃんの肩に顔を埋め、ぎゅっと抱きしめる腕に力を込める。


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