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ショートラブストーリー

第7章 高橋②

「…っ!!くそっ!!」

エプロンを外して、厨房の作業台に叩きつける。

そんなことで苛立ちが収まるわけでもなく…俺は前髪をかき上げるとワイシャツのボタンを外しながらロッカーに向かった。

駄目だな。せっかくオーナーが気遣ってくれたのに、後始末もなにも出来ずに逃げ出した。

「いっちゃん…か…」

ロッカーに頭をつけて凭れる。

一人前じゃなきゃ格下げ。

こんなんじゃ、格下げ決定かもな。

「高橋さん…?」

不意に後ろから声をかけられて、ギクリとしながら振り返った。

「あ、ごめんなさい。着替え中…ですね。あたし、こっちにいますから…」

俺の姿を見た真由美ちゃんが顔を赤らめて、厨房に入っていった。

シャツの前はだけてるだけだぞ!?

昨日だって…亮が半裸で現れても動じなかったのに。

ロッカーの扉を開けようとして変な力が入り、引っかけるように開けてしまったせいで、指先がジンジンと鈍く痛む。

「…ぃてっ!!」

思わず発した言葉に、真由美ちゃんがすぐに反応する。

「どうしたの!?大丈夫!?」

「あ、うん。平気」

指先に息を吹き掛けて痛みを散らしてると

「高橋さん…話、聞いてもらえる?」

真由美ちゃんが厨房から話しかけてきた。

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