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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第3章 弐

「そんなッ。俺は、俺は何も聞いてはおらぬ!」
 噛みつくように言うと、内儀は眼を伏せた。
「言えるわけにないでしょ。石澤さま、お都弥ちゃんは本気で石澤さまに惚れてたんですよ? 惚れた男にそんな野暮なことは女なら、言えっこありませんよ。お都弥ちゃんの気持ちを察してやって下さいな。あの娘は最後まで、石澤さまに愛されたままで、幸せな女のままで逝きたかったんですよ。だから、言えなかった。

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