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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第3章 弐

 黄色い布で丁寧にくるまれた包みを解くと、中から現れたのは、一本の絵蝋燭だった。
 白粉花が繊細な筆致で描かれている。間違いなくお都弥の手になるものだ。
「これを、どうして」
 嘉門が物問いたげな眼を向けると、内儀は眼をわずかにしばたたいた。
「お都弥ちゃん、もう長くはなかったんですよ。石澤さまと親しくなった時、医者から長くても半年、下手をすれば二、三ヵ月のものだって余命まで宣告されてたんです」

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