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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第3章 弐

 今日こそは、あの母に宣言してみせる。
 自分はもう、あなたの言いなりになる孝行息子ではないのだと。生涯の伴侶くらいは、自分の意思で選び、一生選んだ女一人を愛し守るのだと。
 この愛を貫くためであれば、何もかもを棄てることも厭いはしない。それだけの覚悟をもって、立ち向かうつもりだ。
 筆屋と仏具屋に挟まれた角に立った時、嘉門はふと違和感を憶えた。仏具屋の隣の花やの表には板戸がぴっちりと立てられ、何ものの侵入をも拒むかのように閉ざされていた。

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