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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第3章 弐

「―!」
 嘉門の顔からすうと色が失せていった。
 嘉門はすぐさま、隣の仏具屋に飛び込んだ。
「おい、内儀」
 花やに入り浸る中に、いつしか顔見知りになった仏具屋の内儀が奥から出てくる。
 三十代半ばほどの、小柄で愛想の良い女だ。
「誰か、いるのか」
 大声で呼ばわる嘉門に、内儀が大仰に耳を押さえた。

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