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来世にて

第2章 前世

このところ、楓の表情がすぐれない。
気になった帰蝶は楓を側に呼んだ。

「楓、何か悩みでもあるか?わらわが出来ることであれば力になるゆえ申してみよ。」

12才とはいえ、蝮の娘である帰蝶は利発であった。

楓は少し考える風だったが、言葉を選びながら帰蝶に話し始めた。

「このところ、戦勝の祝いの席に接待をするよう呼ばれるのでございます。
表や奥方様方の侍女であればわかるのでございますが、私は帰蝶さまの侍女。表の戦勝の席に呼ばれるのは府に落ちませぬ。」

「そのようなことが。早速父に申しておやめいただくようお願いしてみます。
楓、気が進まぬものを無理にやる必要はない。そなたはわらわの侍女。表の人数が足りねば表の侍女を増やしてもらうゆえ。」

といって、早速道三の居室に向かう。
楓は慌てて帰蝶のあとを追った。

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